先駆者が第一線を退く【パイオニアの歴史を振り返る】
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パイオニアは25日の臨時株主総会にてアジア系ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアから出資受け入れを決めました。
これにより同ファンドがパイオニアを完全子会社化、上場廃止になることが決まり、第一線を退くことになりました。
1961年の上場以来、激動の時代を戦い続けてきた名門企業は時代時代において代表的な商品を残しています。今回はそんなパイオニアの歴史を振り返ってみようと思います。
- 国内初のダイナミックスピーカー「A-8」
- 世界初のセパレート型ステレオ「PSC-1」
- 国内初のレーザーディスクプレイヤー「LD-1000」
- 世界初の市販用GPSカーナビ「AVIC-1」
- プラズマテレビ「Pure Vision、KURO」
- まとめ
国内初のダイナミックスピーカー「A-8」
パイオニアの歴史は創業者の松本 望がアメリカ製のダイナミックスピーカーを聴き、「いつかこんなスピーカーを自分の手で作りたい」と思ったことから始まります。
明確な設計図などなく、主な部品がすべてオリジナルなものですから設計、試作、型起こしまで大変な苦労だったようです。
そして1937年に大阪の優秀な下町工場の協力もあり国内初のダイナミックスピーカー「A-8」が完成しました。
当時、課長クラスの月給が70円の時代、このA-8は10円。
妥協せず細部までこだわったダイナミックスピーカーは超高級品として売り出されたのです。
世界初のセパレート型ステレオ「PSC-1」
1960年にはセンターユニットと左右のスピーカーを分離して設置できる世界初のセパレート型ステレオを発売しました。
当時はレコードそのものが高価であったためステレオ装置などは一部の富裕層しか買えなかったようですが高級感溢れるデザイン、存在感がステータスとして捉えられ、音楽ファンに限らず、多くの人達を魅了しました。
高すぎてあまり売れなかったようですが…
この頃から「スピーカーのパイオニア」として世間から認められるようになり、オーディオブーム全盛期には山水電気、トリオと並んでオーディオ御三家と呼ばれ、親しまれた。
国内初のレーザーディスクプレイヤー「LD-1000」
絵の出るレコードのキャッチコピーで日本で初めて発売されたLDプレイヤー、LD-1000はレーザーディスクと呼ばれる直径30㎝の光ディスクを再生するAV機器です。レーザーディスクはでっかいDVDだと思ってもらえればいいでしょう。
レンタルが禁止だったため馴染みのない方も多いと思いますがVHSと共に、DVD規格が登場するまで映画、音楽、アニメといった再生、記録に使われました。
世界初の市販用GPSカーナビ「AVIC-1」
GPS(全地球測位システム)を搭載した世界で初めてのカーナビAVIC-1。道路が複雑に入り組んで経路がしずらい日本の道路事情にマッチした画期的なカーナビで、ブランドとして継承されるカロッツェリアはパイオニアの代表的なヒット商品になりました。
プラズマテレビ「Pure Vision、KURO」
プラズマテレビと言えばパイオニアを思い浮かべる人も多いでしょう。
今はすっかり目にしなくなったプラズマテレビですが2000年代前半から後半にかけて液晶テレビと覇権を争っていました。
多くのメーカーが液晶とプラズマテレビ両方を生産する中、パイオニアはプラズマテレビのみを生産し、プラズマ陣営を先導するメーカーでした。
まとめ
こうして振り返ってみると「先駆者」の名に恥じることなく、時代の最先端を走ってきた企業であることがわかります。
中には技術の先頭を走ってきたという過信が今回の事態を招いたという意見もあるようですが私はただ運がなかっただけのように思います。
運も実力のうちと言われればそれまでですがプラズマテレビと液晶テレビで争っていた時は誰もここまで液晶ディスプレイが安価に生産できるとは予測できませんでしたし、ここまで高性能化するとも予測できなかったはずです。
パナソニックやソニー、日立製作所などとは企業規模の敵わないパイオニアにとって液晶とプラズマの並行開発は難しく、どちらか一方に全力でかじを切った判断は見事だったと思います。ただかじを切った方向に氷山があった。その結果を「過信」と評すのはあまりに酷ではないでしょうか。
幸い、再建に最も必要な”資金”を出資してくれる存在があるのですからパイオニアの未来はまだ閉ざされていません。
時代の先頭を走り続けてきたパイオニアにはひと時の休憩が必要なのでしょう。数年後、また「先駆者」として時代の先頭を走ることを期待しています。