働き方改革という名の働かない改革
今日の日経新聞の朝刊で面白い記事を見つけました。
現在進められている「働き方改革」に異議を唱えるものです。
シンガポールで会計事務所の代表を務める公認会計士の長縄順一さんはがむしゃらに働き、ゼロから拠点を気付いた経験から、今の労働時間を抑制する「働き方改革」に違和感を覚えるという内容の記事です。
大変興味深い記事でしたので今回はこの記事を中心に「働き方」について考えていきたいと思います。
働き方改革とは
働き方改革について厚生労働省は公式HPで次のように記しています。
要約すると、就業機会の拡大と能力の適切な評価によって就業意欲を高め、生産性を向上させようというものです。
ではどのようにしてそれを実現するのか。それが赤線の部分です。
人は各々事情を抱えているものです。小さいお子さんがいる人、介護が必要な親と同居している人、ケガや病気などでフルタイムで働けない人などなど。
今まで労働時間は午前中の9時から夕方の5時までプラスαというのが一般的でしたが上記したように人にはいろいろな事情があるもので必ずしもこのような働き方が出来るとは限りません。
その場合、今までは退職したり休職したりと言った選択がとられていたわけですが、これでは労働意欲が低下したり、退職により労働力そのものが失われたりして生産性の低下につながるということで時間や場所にとらわれることなく、多様な働き方を認めることで労働力を確保し、生産性を向上させようということですね。
現状は”働かない”改革
しかし現在行われている働き方改革は長縄さんが違和感を覚えたように、厚生労働省のHPに書かれている内容とは異なる部分が多々あります。
午後10時には会社が強制消灯、残業・休日出勤の禁止、有給休暇取得の義務化など多様な働き方というよりは労働時間の抑制に動いています。
日本人は働きまくってきたことや、過労死やストレスによる自殺などが社会問題になった経緯もあり、働き過ぎにスポットが当たることは仕方がないのですがこれでは多様な働き方が出来るようになったのではなく、働き方の指針が変わったにすぎません。
自営業やフリーランスはどうするのか
仕事の成果に関わらず一定の報酬が約束されている会社員と違い、自営業やフリーランスの人は成果=報酬です。
そのため、成果が出なければ報酬も出ません。言い換えると一定の成果が出るまでは働き続けなければ生活することが出来ないのです。
資金繰りが悪く、長時間労働をしなければ生活できない自営業者は?彼らが過労死した場合は自己責任?
働きたくとも働けない会社員
働きたくなくとも生活のために働かなくてはならない自営業者。
なんともちぐはぐな改革です。
真の働き方改革を
人とは実に多様性に富んでいます。10人の人間がいれば10人とも異なった事情があり、性格を持っています。つまりは10人それぞれ適した働き方があるはずなのです。
低血圧で朝起きることが苦痛である人が昼から出勤できるとなればどれだけいいでしょうか。
自宅勤務が出来るようになれば親の介護をしながら働けるという人もいるでしょう。
そして将来の夢に向かってお金を貯めたい人やもっともっと仕事をしたいという人が8時間以上働くことはいけないことなのでしょうか。
過労死=会社の責任では働き方改革は不可能
多様な働き方を認めるということは働き方を働き手に任せるということでもあります。仕事のし過ぎで過労死した、自殺した、病気になったと言った問題をすべて会社のせいにしていては会社側もリスク回避のため、社員を働かせようとはしないでしょう。
多様な働き方として「バリバリ働く」という選択肢を認めるということは働き過ぎによって生じた問題の責任が誰にあるのかを明確化しなければならないということでもあるのです。
まとめ
こうして考えてみると多様な働き方を認めるということはそれほど簡単ではないことが分かりますね。
会社から長時間の労働を強いられ、命を落とすなんてことは絶対にあってはならないことですが働きたい人が働けないというのもおかしな話です。
仕事はほどほどにプライベートや家の事情を優先したい人もバリバリ働いて沢山お金を稼ぎたい人も満足良く働き方が選択できる真の働き方改革を実現してほしいです。