なぜか下がらない…ポンドの謎
EU離脱問題に揺れるイギリスですが合意無き離脱という最悪のシナリオが現実味を帯びてくる中、イギリスの通貨ポンドの値動きが落ち着いていることがちょっとした話題になっています。
未だかつてないほどイギリスを揺るがしかねない大問題に直面しているにも関わらずこの落ち着き払った値動きはいったい何なのでしょうか。
現在のイギリスの現状
EUはイギリスのEU離脱の期限を4月12日までと定めています。それまでにイギリスは離脱案をまとめなけばならないのですがメイ首相の離脱案に対し、イギリス議会が離脱案を否決。
メイ首相は再度離脱案の練り直し、与野党の賛成とりつけのため6月までの再延期を要請している状況です。
もし合意無き離脱となればイギリスにとって経済的に大打撃になることは間違いありませんがその他にも貿易、流通、金融等のやりとりのルールも変わってしまうので一般市民の生活にも大きな影響を及ぼすことになります。
なぜポンドは下がらないのか
そんな不安要素しかないようなイギリスのポンドですがなぜか値動きは安定しているのです。もちろん、他国の通貨と比べるとその値動きはかなり激しいものなのですが殺人通貨の異名を持つポンドにしてはなんと穏やかな波でしょうか。
なぜ値崩れしないのでしょうか。
合意無き離脱などあり得ないという楽観論
それはEUにもイギリスにも合意無き離脱には至らないだろうという楽観論が大半を占めるからです。
というのもEUにもイギリスにも合意無き離脱をするメリットがないのです。合意無き離脱はもともとEU加盟国として行われていた貿易・流通・金融のルールを白紙に戻すようなものです。
ルールがなくなればどうやっても混乱は避けられません。EUから離脱したほうが良いと考える政治家も飽くまでEUのルールではなくイギリスのルールでやりたいのであってEUとケンカをしたいわけではありませんし、イギリスに混乱をもたらしたいわけでもありません。
そのため、今後EUとの交渉に進展が見られない場合、離脱案に反対している議員もしぶしぶではあるにしろ賛成し穏便な離脱に至るだろうというのが大方の予想です。
絶対などない。個人投資家は特に警戒せよ
しかし今の情勢でのポンドを取引することはとても危険であると私は考えています。
なぜなら投資に絶対などないからです。
私が知る限り、過去最近、2回”ありえない”とされる事態に陥り、為替市場は大きな混乱を経験しています。
それがこちら、EU離脱の是非を問う国民投票での離脱派の勝利とアメリカ大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利です。
国民投票での離脱派勝利
当時、イギリス内でのEUに対する不満は相当なものでしたがEUを離脱した場合の経済リスクはすさまじいことから、不満はあっても最終的には残留という理性的な判断をイギリス国民は下すだろうと皆、高を括っていました。
それがどうでしょう。ふたを開けてみれば僅差とは言え離脱派が勝利。高をくくっていた投資家の資産をぶち壊すかのようにポンドは大暴落しました。
ドナルド・トランプ氏の勝利
それから間もなくして起こったのがアメリカ大統領選挙にて、ドナルド・トランプ氏がヒラリークリントン氏を破り大統領に当選したことです。
過激な発言から当初から注目は浴びていたトランプ氏ですがまさか共和党候補として大統領選を戦うと思っていた人はいないでしょうし、おそらくですが本人ですら当初大統領候補になれるとは思っていなかったと思います。
しかし途中経過で次第にトランプ氏の優勢が伝えられ始めると急速に円が買われ、為替市場は大きく混乱しました。
まとめ
以上のことから今のポンドを取引することは非常に危険であるということが分かると思います。
取引したい、しようと思っていた方はもう一度冷静になってトレードルールを考えてみてください。
合意無き離脱はないと踏んでポンドを買いますか?予想通り合意無き離脱を回避したとしていくらまで値上がりすると見込めますか?いくらで利益確定しますか?
そして万が一合意無き離脱に至った場合、ポンドはどこまで値下がりしますか?そしてあなたはどこでロスカットしますか?
合意無き離脱に至った場合、いったいどこまでポンドが下げるのか予想できません。予想できないということは負けた場合の損失が未知数であるということです。
損失が未知数である以上利益も未知数でなければトレードの整合性はとれませんが見込める値上がりはたかが知れています。なぜなら皆、合意無き離脱などあり得ないと思っているのですから。
総合的に考えた時、いかにこのトレードが不透明で不確実なものかわかるはずです。
分からないものに期待だけで金銭を投じる。人はこれをギャンブルと呼びます。