原子力発電はもはや割安な発電方法とは言えない【日本の今後のエネルギー開発】
日立製作所は17日、イギリスでの原子力発電所の新設事業を凍結すると発表しました。
日立製作所はイギリス政府に対して追加支援を求めていましたが、追加支援の目途が立たなくなったのが凍結の大きな理由のようです。
日本は福島第一原発の事故以降、国内での原子力発電所の新設、運営が困難なことから海外に活路を求めていましたがそれも難しいようです。
原発の発電コストの高騰
福島第一原発の事故以降、国内では原発に対する安全意識が高まっており新設・運用が困難な状況にあります。仮に新設・運用が叶ったとしても防災は1000年に1度の大災害を想定して運用しなければならず、その安全管理費は凄まじいものになります。
原子力発電は従来の火力発電のように大量の化石燃料を使用することなく、少量のウランで莫大な電力を発電できることから非常に安価な発電方法であるとして日本では原発開発が進められてきました。
しかし、発電に使う材料が安価であっても安全管理費に押しつぶされ、割安に発電できる手段とは言えなくなりつつあります。
海外でも安全対策費は高騰
今回の日立製作所のイギリスの原発事業凍結も最大の要因は安全対策費にあると見られています。
日立の東原俊昭社長は
コストを民間企業の日立がすべて負担することには限界がある
とコメントしています。
日立製作所と言えば総資産10兆円にも上る超巨大企業です。
そんな超巨大企業の日立が普通の発電所の開発・運営コストを賄えないはずがありません。
問題はどこまでのリスクを想定して安全管理を行うか、また万が一事故が起こった場合の補償を日立がどこまで負担するのかといった安全管理の費用、負担、補償についてイギリスにある程度支援してもらえないかと言った交渉があったものと推測されます。
再生可能エネルギーの台頭
太陽光発電や風力発電と言った再生可能エネルギーの利用は1990年代ごろから始まりましたが当初は発電量も微量なうえ、発電設備も高く、原子力発電と比べてあまり注目されていませんでした。
しかし、安全管理費の高騰で原子力発電が安価な発電方法と言えなくなったことに加え、技術の進歩により再生可能エネルギーはより安くより大量に発電できるようになってきています。
環境問題に関心の高いヨーロッパを中心に研究・開発がなされ、その流れは止まらないでしょう。つまり今よりもさらに安く、そして大量に発電できるようになることは確実です。
原子力発電に未来はあるのか
安全管理費の高騰によって発電コストが高騰した原子力発電が生き残るには安全性の確立か飛躍的な生産力向上しかありません。
しかし放射性物質を用いる以上、再生可能エネルギーより安全になることはあり得ません。そうなると今よりさらに安価に大量に電力を生産できるようにするしかないのですがその最後の希望であった高速増殖炉、もんじゅは2016年末に廃炉が決定し、暗礁に乗り上げています。
研究継続か再生可能エネルギーへのシフトか
次世代エネルギーに原子力エネルギーを選んだ日本は欧州と比べて再生可能エネルギーの研究・開発が遅れている現状があるので簡単に方向転換出来ないという事情があります。
仮に高速増殖炉の安全な実用化が可能になれば今では比較にならないほどの発電効率が生まれ、世界のエネルギー問題を一手に解決しかねないほどの夢の技術でもあります。
しかし、研究開発には莫大な資金が必要であり、その資金を確保できるのかという問題があります。また、研究してみた結果、実用化することは出来ないとなればそれまでの研究開発費はすべて無駄になってしまいます。
今から方向転換をして他国に追いつけるのか、原子力の研究を続けるにして国民を説得できるのか、また、再生可能エネルギーに勝つことが出来るのか。
日本のエネルギー開発は非常に難しい岐路に立たされています。