教育という名の投資
昨今政治の世界では教育無償化の話をよく聞きます。これは私の記憶で裏を取ったものではありませんが教育無償化の話は2009年に民主党の政策として高等学校授業料無償化が初めだったと思います。
そして公約を実行する形で2010年から高等学校等就学支援金制度が始まりました。
さらに現在では所得が一定以下の世帯の大学の授業料や入学金を支援しようという取り組みが始まっています。
払う側からすれば払うお金は安いほうがいいに決まっています。しかし国は慈善団体ではないので取る行動には損得が絡んできます。
教育を無償化することによって日本にはどんないいことがあるのでしょうか。
また、教育を無償化することで国はどんなことを狙っているのでしょうか。
教育の目的
「教育」とただ言ってしまうと論点が膨大になってしまいます。したがってここでは経済の側面からみた教育を見ていこうと思います。
教育とは投資です。このことは以前記事で少し触れました。
分かりやすいのが先行投資でしょうか。
薬の研究開発などがこれにあたります。薬が完成するまでの人件費、研究開発費はすべてマイナスになりますがいい薬が完成すれば莫大な利益を生み出します。
これと同じように子供たちに質のいい教育を受けさせることにより、将来的に有望な人材を多く生み出し生産性の向上、クリエイティブな産業を生み出すといった目的を持ちます。
国が教育費の無償化に取り組むのはこれが大きな目的です。
というのも実際問題教育にはお金がかかります。特に医学部などの学費はとても高く、私立などではトータルで3000万以上かかる場合もあるようです。
そうすると非常に優秀なのにも関わらず家にお金がないため教育を受けられないという事態が生じます。
これは教育を受ける権利にも関わる問題ですが経済的にも問題なのです。
インパクトを出すために3000万以上の学校もあると紹介しましたが国立の大学になると場合によっては300~400万程度で済む場合もあります。
医者の生涯年収を見てみるとおよそ4億~5億円。最終学歴が高卒の人の生涯年収を見ると2億~3億円です。
医者になれるだけの才能と学力があったにも関わらず300万円が払えないために医者を諦めたとなっては大きな損失になってしまうわけです。
こんなことはばかばかしいですよね。
投資の名を借りたばらまきにしてはならない
経済政策において時折騒がれるばらまき。すごく簡単に言うと票を得るため、現在の体制を維持するための政策のことです。(お金をばらまく)
授業料がタダになる。これで喜ばない親はいないはずです。対象となる国民から支持を得られるのは確実でしょう。
しかし投資である以上、政策である以上それによる費用対効果を考えなければなりません。
現在私は31歳。子供のころの夢はプロの囲碁棋士になることでした。そんな私に今から莫大な教育費を与え囲碁の英才教育を施したところでその費用に見合う成果を上げることは0に等しいでしょう。
極端な例でしたがベクトルは同じで明らかに勉強に向いていない子に無理やり高度な教育をしても効果は限定的ですし働きたくないからとりあえず大学に行くなどと考えている子に対して投資しても回収できる見込みは低いのです。
そもそも学力を必要としない「単純労働」も経済を支える大事な労働力で誰かが担わなければなりません。高度な知識とスキルを身に着ければそれを活かしたいと思うのが普通です。皆が皆高学歴になるわけにはいかない事情もあるのです。
まとめ
潤沢な資金があるメガバンクなどは将来性のある企業に手あたり次第に投資するという選択肢もあるのかもしれません。しかし一般の個人投資家は投資に回せる資金には限りがあり、慎重に取捨選択し投資していかないと利益を出し生き残っていくことは出来ないものです。
今の日本の財政状況を考えてみましょう。メガバンクと言えるでしょうか。誰にも批難されない政策にこそ落とし穴があるものです。
大学の授業料免除が若者の遊ぶ期間を4年延長しただけだったなどという結果だけは避けねばなりません。