経済・お金のあれこれ

経済やお金に関するあれやこれや。今更人に聞けないあんなことやこんなこと。経済やお金についてよくわからない人に対してわかりやすく役に立つ情報を提供することを目指します。

既存顧客の保護と新規顧客の獲得~~利益を最大化するには

 私が子供のころ(平成10年前後)は当たり前のようにできた「立ち読み」ですがだいたい30年ほど前から「シュリンクパック」と呼ばれる薄いフィルムに保護され立ち読みが出来ないようにして販売するお店が増えていったようです。

当時は今ほど娯楽もなく私自身お小遣いがないに等しい立場でしたので立ち読み、立ちゲーは結構な娯楽でした。

夏休みや冬休みなどは書店に通いつめ、人気漫画を読み漁り、ゲーム屋さんに行ってお試し用に置いてあった「バイオハザード」などを全クリしてしまったのは良き思い出です。

そして私のような輩が蔓延ってちっとも本やゲームが売れないからこのような対策を取るようになっていったのでしょうね…

 

しかし、「立ち読み禁止」スタイルが主流になった現在、小学館は一部の漫画を立ち読みできるようにしました。すると漫画全体の売り上げが約20%増えたそうです。

 

立ち読みできるようにしたことでなぜ売り上げが伸びたのでしょうか。時代に逆行するスタイルがなぜ成功したのでしょうか、考えていきたいと思います。

 

立ち読み防止は既存顧客の保護

そもそもなぜ書店は立ち読みが出来ないようにしていったのか、それは前述したように私のような輩がいるためですね。

私は漫画が大好きだったのでよく立ち読みしました。大きいところで言うとなんと言っても「こち亀」でしょうか。

当時はまだ完結していませんでしたがそれでも100巻くらいまでは出てたと思います。

すべて立ち読みしました。

1冊400円として100冊で40000円。お店としてはタダで読まれてしまったわけです。

そして何を買っていくわけでもなく読むだけ読んでとっとと帰る。店側からすればもはや私は客とは呼べない存在だったでしょう。

つまり本来顧客となるはずの人が顧客でなくなってしまっている。すでに漫画が好きな人、その本を読む意欲が高い人たちを顧客として保護する意味合いがあるわけです。

私のようにお金がない人は立ち読みが禁止されたからと言って買うわけではないのでそれほど単純な話でもないのですがもともと漫画が好きで立ち読み出来るからという理由で購入していなかった人は買うようになりますよね。

 

新規の顧客獲得は難しくなる

もともと漫画が好きな人であれば購入の動機は多種多様です。知らない漫画家だ、好きな絵だ、好きな漫画家の新作だ等々…

本の内容が分からなくても買ってもらえる機会はたくさんあります。そしてこの好奇心を満たすための立ち読みが出来ないので購入するしかありません。立ち読み禁止は効果的に作用しますね。

しかしこれは漫画が好きな人です。

普通の人はどのように本を購入するでしょうか。

まず本棚に目を通していき気になるタイトルやパッケージが見つかると目を留めます。

そしてそれを手に取ってパラパラとめくってみるものです。そして興味深いな、読んでみようと思って初めて購入します。しかし漫画ではこれが禁止されています。よほど興味深いタイトルやパッケージでないと購入には至らないでしょう。立ち読みを禁止することで新しい顧客を獲得することは難しくなります。

 

バランスを取って利益の最大化

このように立ち読みを許すか許さないかにはメリットデメリットがあります。そして多くの書店が立ち読み禁止を採用していたことから今までは既存の顧客を守ることで十分に収益を上げることが出来ていたのでしょう。

しかし昨今では提供されるコンテンツそのものが増え、今まで漫画のファンだった人も他のコンテンツに流れてしまったり、同業でも電子書籍などに押され書店の収益は間違いなく悪化しているでしょう。今までのように既存の顧客を守るだけでは生き残れなくなってきました。

 漫画から離れてしまった人たちや今まで漫画に興味を示さなかった人たちを取り込む必要性が出てきたのです。

ではどうしたらよいでしょうか。昔のように立ち読みできるようにすれば良いでしょうか。そうすればまた私のような人間がわさわさとやってきて店内のお邪魔虫と化してしまします。

そこで小学館一部の漫画を立ち読みできるようにしました。

具体的に言うと第一巻と最新巻だけを立ち読みできるようにしました。

一部という中でもこの「一巻と最新巻」というのがポイントです。

例えばこんな感じです。

 

 

赤ん坊を死産してしまって悲しみに暮れるケイトをジョンは慰めていました。

 

 

 

 

しかしケイトの再三の忠告を聞き入れなかった結果ジョンは命を落としてしまったのです。

 

どうでしょうか。やっつけですが気になりませんか?なんでそうなったと。

ちなみにこれはエスター というホラー映画です。

第一巻だけを立ち読みできるようにしている書店はちょくちょくありましたがこのように間を大きく開けることが味噌で興味を引くのに実に効果的だと思います。

 

まとめ

日本のアニメ涼宮ハルヒの憂鬱翻訳もされていなければ放送すらされていないアメリカで3か月で6万セット売れるという珍事がありました。

原因はyoutubeに違法にアップロードされた動画で、これを見てファンになった人たちが買い求めた結果でした。

これも立ち読みに似ていますよね。

いうなれば宣伝広告費に近いのではないかと思っています。タダで提供すれば買ってもらえない。しかしながらタダで提供しなければそもそもに知ってもらえない。

そこで一部をタダで、それも間を抜く形で提供することで作品に興味を持ってもらう。

どの程度の広告費を出すか、すなわちどの程度タダでコンテンツを提供するか。このバランスを調整することで利益を最大化することが出来ます。

売る側からすればタダで読まれて買ってもらえるはずが買ってもらえなかった、損をしたと感じがちですが利益を出すためには出費することも必要なのです。

そして百戦錬磨の経営者はそのことを実によく知っていて、実にうまい先行投資を行うものです。


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