超高額医薬品が続々登場~~どうなる医療保険制度
この度京都大学名誉教授の本庶佑さんがノーベル医学生理学賞を受賞しました。
本庶さんは免疫の働きにブレーキをかけるたんぱく質「PD-1」を発見し、このPD-1でがん細胞が免疫からの攻撃を逃れていることを突き止めました。
このことからPD-1の働きを阻害し、免疫にがん細胞への攻撃を促す「がん免疫療法」の開発に貢献したことが評価されました。
そしてこのがん免疫療法を基に「オプジーボ」が開発されました。
しかしこのオプジーボは非常に高価であることで話題になりました。ガンを完治させる可能性がある画期的な新薬であると同時に日本経済を破綻させる可能性のある爆弾とも言えます。
そして昨今、このオプジーボを上回る新薬が続々と開発されています。今まで治らなかった病気が治るようになるのと同時に高騰し続ける医療費に私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。考えていきます。
画期的な新薬「オプジーボ」
オプジーボは開発に貢献した本庶氏がノーベル賞を受賞したように今までにない画期的な治療薬です。従来の抗がん剤は基本的にがんを駆逐する力はなく、延命が主な目的でした。しかしこのオプジーボはガンを完治させる可能性があり、がんとの長い戦いに終止符を打つ新薬になり得るのです。
発売当初は悪性黒色腫の治療薬として認可されましたが後に非小細胞肺癌、腎細胞癌にも利用拡大されました。
しかしこのオプジーボ、発売当初は1回当たり130万円、1年間の利用で3500万円という超高額医療品で、これを問題視した厚生労働省は中央社会保険医療協議会に値下げするように働きかけました。(現在は1回あたり27万円まで値下げ)
オプジーボに続く超高額医療品が続々登場
国際的な医療企業であるノバルティスの新薬は1回当たり5200万円
白血病の治療薬で免疫細胞を活用する効果の高いバイオ新薬と言われています。
この新薬はすでに厚生労働省に承認審査を要請しており、順調にいけば年内にも承認される予定です。
その他にもリンパ腫治療薬の「イエスカルタ」は4200万円。
網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」は両目で9600万円の値がついています。
なぜ新薬の価格が高騰しているのか
超高額医薬品に共通するのはバイオ新薬であるということです。
化学合成によって作られる従来の薬とは違いバイオ新薬は人間の体内にあるたんぱく質(ホルモン、酵素、抗体など)を使います。
これらを細胞自身や微生物に培養させたり遺伝子を組み替えて合成したりして作られるのです。
今までの新薬の開発は東京ドームのどこかに落ちている1円玉を探し出すような作業でしたがバイオ新薬の開発は文京区から指定された1円玉を探すような作業です。
今までの新薬開発も十分複雑でしたがそれを何倍も上回る労力と計算が必要になるため、今まで以上の莫大な研究開発費が必要になるのです。
決して命を盾に取って儲けようとしているわけではないのです。
命の価値は
日本には高額医療費制度というものがあります。これは月の医療費が一定金額を超える場合、自身の収入に応じて限度額以上の支払いを免除してもらう制度です。
例えば年収が300万円程度の人であれば医療費が1000万かかろうと1ヶ月に支払う限度額は57600円です。
これには命の価値はみな平等で収入によって受ける医療の質に差が出来てはならないという考え方から来ています。
これは大変立派な考えですが新薬の高騰はもはやそんなきれいごとでは済まされない領域に来てしまいました。
現在の医療制度を見直し、一定の価格を超える医薬品に関しては保険の適用を除外するべきです。お金がないために治療が受けられず命を落とすなどということが実際に起きれば社会問題になることは必至ですがこのままの医療制度を維持すれば日本経済そのものが破綻し全員が医療を受けられない事態に必ずなります。
研究開発にお金がかかる以上、値下げさせるにも限度があり今までのように全員に平等に医療を提供するのは不可能です。
未だ専門家でも「命に値段をつける」といった制度を導入するべきではないという抵抗が強いようですがその場合どのように現在の医療制度を維持するのか具体案を示すべきです。
きれいごとを並べることは実に簡単で人々の支持を受けやすく非難もされにくいので発言力のある人たちは現実の問題を直視せずきれいごとに逃げてきました。
今こそ現実を見つめ、真剣に考えるときです。そうしないと我々は理想に滅ぼされるでしょう。