菅官房長官の発言で大手キャリアの値下げ競争が幕開け【経済の視点から菅ショックを考える】
NTTドコモは2019年の4~6月に通信料を2~4割程度値下げすると発表しました。
値下げにはいろいろな背景が存在しますが菅官房長官が8月に
「携帯料金は今より4割程度下げる余地がある」
と発言した政府の意向も大きく影響したと思われます。
キャリア大手3社は暴落
今回値下げを発表したのはNTTドコモだけでしたがドコモに対応する形でKDDI、ソフトバンクも値下げを余儀なくされるという見方からKDDI,ソフトバンクの株価もそろって暴落しました。
菅官房長官の発言の意図は何だったのか
KDDIは唯一値下げに慎重な姿勢を見せていますが8月の菅官房長官の発言でNTTドコモを皮切りに携帯会社は値下げの方向に動くことは確実です。今携帯料金を値下げさせることで日本に何のメリットがあるのでしょうか。
値下げ競争への誘導は脱・デフレに逆行する
確かに今や携帯・スマートフォンは日本人であれば1人1台持っているのが当たり前の状況で値下げされることで多くの人が喜ぶでしょう。しかし日本は経済を成長させるための2%の物価上昇を目標としている状況です。
その状況で政府自ら値下げに圧力をかける意味が分かりません。
デブレ脱却のためには企業が稼ぎ、その稼ぎを株主や社員に給料やボーナス、配当金などで還元することによりお金の循環を良くすることが基本です。
今回の政府の介入でNTTドコモを皮切りに熾烈な値下げ競争が幕を開けるのは確実です。値下げ競争が過熱することは経済をデブレに推し進めるようなものです。
どうせ介入するのであれば利益還元、つまり社員のベースアップやボーナスアップ、配当金を増やすように要求する、競争を促す意味で言えばキャリアが格安SIMを提供する会社(MVNO)に貸し出している通信設備への接続料の値下げを促す等、ほかにやり方があったように思います。
一番の被害者は楽天
ドコモの値下げ発表で大手3社の株価はそろって暴落し、大きな被害を被っていますが一番の被害者は新規参入を発表していた楽天でしょう。
昔は各々の携帯会社が特徴を持っていました。ドコモはiモードを使った豊富なアプリ、auは大変お世話になった学割。今は亡きJ-PHONEはカメラ付きの携帯を唯一提供していました。
ところが今やiphoneをはじめとして人気機種はほとんどの会社で提供していますし携帯会社として特色をだすのが難しくなっています。
そんな中、楽天が新規参入すると聞いた時は血迷ったのかと思いましたがもし菅官房長官が言う通り、大手3社が割高な料金体系を敷いているのであればそれよりも割安にサービスを提供しようという作戦が必ず楽天にあったはずです。
ところが菅官房長官の横やりで大手3社が値下げに動いてしまうのは価格の安さを売りにしたかった楽天にとっては大きな誤算だったに違いありません。
また楽天以外にも「格安」を売りにしたLINEモバイル、mineo、UQ mobilなども大手の値下げで打撃を受けるでしょう。
そもそも日本の携帯料金は高いのか
確かに大手3社を利用している人の使用料金を見ると月に9000円以上使っている人が最も多く、一見割高に思います。しかしそれは大手3社に限った話です。
格安SIMのランキングを見るとLINEモバイル、UQモバイルともに3000円未満、mineoは2000円未満の利用者が最も多く、格安SIMで契約すれば携帯料金は安く抑えられることが分かります。
まとめ
帝国ホテルやホテルオークラと言った一流ホテルの宿泊料が高いのは当たり前です。8月の菅官房長官の発言はビジネスホテルに比べて帝国ホテルの宿泊料が高すぎるという発言に等しいです。
もし利用者が携帯料金が高いと感じれば格安SIMを利用すればよかったはずです。仮に大手3社が格安SIM並みに利用料金を値下げすれば格安SIMを売りにしていた会社はいったいどうすればよいのでしょうか。
3社は利益圧縮、格安SIM勢は存続の危機。まったく余計な発言だったと言わざるを得ません。