経済・お金のあれこれ

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中小企業の後継者問題が深刻化~~なぜ後継者が見つからないのか

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日本企業の99%を占める中小企業の多くが後継者が見つからずこのままでは廃業になると言われています。

中小企業の経営者に定年はないのでいつまでやるかは本人次第ですがどうやら好きで老体に鞭を打っているわけではないようです。

そう、それが後継者が見つからないという事態です。後継者がいないので自分が続けざるを得ないということで中小企業の経営者が引退できずにいます。

現在の中小企業経営者の平均引退年齢は70歳。普通の社会人よりも5年多く働いています。

また、すでに70歳を過ぎている経営者が245万人いるとされ、その約半数が後継者が見つかっていないのだそうです。

決して火の車というわけではなく黒字経営なのにも関わらず後継者が見つからないのはなぜなのでしょうか。

金銭的負担が大きい

例え経営が黒字であっても会社や工場を運営するには設備投資が必要になります。例えば金属加工を行う会社であれば高額のプレス機などが何台もあります。それらを購入する時はもちろんのこと、購入した後も定期的なメンテナンスや不具合や故障も定期的に起こるでしょう。

また機械やシステムは壊れるまで使えるわけでもなく技術の進歩に合わせて買い替えを行わなければなりません。

こういった設備投資を行う場合、非上場企業は私財を担保にして銀行から融資を受けたりするのがほとんどです。こういったリスクを負ってまで会社を引き継ごうと考える人が少ないのです。

「家業」という考えが失われつつある

昭和の時代あたりでは長男が跡を継ぐというのが自然でした。しかし現代では職の選択の自由が増えたことや社会の考え方そのものの変化により「家は長男が継ぐもの」と言ったことは「古い考え」と認識されるようになりました。

「政治家」や「医者」と職種にはまだこの家業という認識が強くあり子供が跡を継ぐと言ったこともまだまだ見られますが社会全体では減りつつあります。

しかし先ほども述べたように会社の設備投資のための融資は私財を担保にしていたり、会社の連帯保証人が社長自身であったりその家族だったりするため親族以外に引き継ぐのが困難なケースも多くないのです。

 

 

経済産業省はこのまま何の解決策もないまま進めば中小企業の黒字廃業が相次ぎ、2025年までに約22兆円の国内総生産が失われると試算しています。

また、職人が持つ専門技術や知識などお金に換算するのが難しい財の損失を考えると総合的な損失は計り知れないものになるでしょう。何とかこの事態を回避する方法はないのでしょうか。

M&Aに活路…しかし問題点も…

この継承問題で注目されているのがM&Aです。M&Aとは会社そのものや事業の一部を売買する取引のことです。これにより中小企業が培ってきた技術や経験を買ってもらうことで買ってもらった先で技術が継承されていくということですね。

事業継承のM&Aが一般的になればひとまず今騒がれている後継者問題は解決するでしょう。しかしM&Aにはまだまだ問題点もあります。

費用が未知数

鉛筆や消しゴムを売るのとはわけが違います。会社や事業を売却するとなると会社の設備や権利の書き換え、税金の計算、また買収後どのように事業を行っていくかなど法的にも技術的にも専門的な話し合いが行われます。そのためM&Aには専門家の仲介が入ることがほとんどでこの仲介料も安くないのです。

また、売り手側も少しでも高く買い取ってもらいたいと思うのが自然でしょう。買い手側も少しでも安く買いたいと思うのが自然です。

そのため同規模のM&Aであってもいくらの利益になるか、どれくらいの手数料がかかるかというのがケースによって違うのです。

したがって想像していたより高額の手数料がかかりとん挫してしまったり、思った額の半分程度で売却することになったといったことが往々にして起こります。

事例が少なく手探り

今大企業の間では生き残りをかけてM&Aは活発に行われています。しかし中小企業の間では費用のこともあり活発に行われてはいません。そもそもに費用が手軽ではないので事業継承の選択肢にM&Aを盛り込める企業は中小企業の中でもかなりの利益を上げているところに限定されます。

中小企業の断捨離

「会社は家族が継ぐもの」今の日本の法律はこの前提に沿った法律になっているのです。そのため働き方が変わってきた現代ではそもそもに家族が継がないし家族が継ぐことが前提で考えられている法律下では第三者が継ぐにもメリットが少ないのです。

技術や経験があり利益を生み出せる中小企業はM&Aで事業継承されていくことでしょう。しかしあまり利益が生み出せなかったり、M&Aをしてまで手に入れる価値がないと判断された企業たちは淘汰されていくことになるのだと思います。

 

今のこの問題の根本は日本人が「正しい経営」をしてこなかったことにあると思います。

つまり「良いものを安く」売ってきたことです。それは一見良いことのように思われますが「良いものが安く」売られることによって良いものが作れない人たちが市場に参入出来なくしたということがあります。

もしアメリカのように良いものを高く売っていたならば良いものを作れない人も普通のものを安く売ることで商売が出来たはずです。

技術に見合った報酬を受け取っていれば今の日本の中小企業のように「世界一の技術があるのに金はない」という摩訶不思議な現象は回避できたのではないでしょうか。