【障害者が社会で活躍、貴重な労働力として】~~本当に?
ここ10年で障害を持つ人の新規雇用が2倍になりました。その中でも特に精神障害者の伸びが大きく、中には積極的に精神障害者を雇用する企業まであります。
なぜ精神障害者の雇用が伸びているのでしょうか。考えていきたいと思います。
精神障害の特性を活かす
東京都江戸川区にある中古OA機器販売会社のリベラル。作業場では4人の障害者が1台の中古オフィス用複合機の分解・清掃に取り組んでいた。黙々と4~5時間かけ、新品同様に再生した。その姿勢は教育を担当する佐久間賢課長が「自分では到底まねができない」と舌を巻くほどだ。
こちらは日経新聞から引用した文章です。あなたはこの文章から4人の障害者がどのような障害を持っているか推察できましたか?
この文章のポイントは黙々と4~5時間かけ、新品同様に再生した。の部分です。「自分には到底まねができない」というのもこの部分を指しています。
要約すると4~5時間も黙々と作業し続ける集中力をたたえているわけです。
アスペルガーという障害
精神障害の中にアスペルガー障害というものがあります。アスペルガー障害は簡単に言うと空気を読む能力が著しく欠如した障害です。「人にケガをさせることはいけないことだ」や「決められた時間以外にゴミを捨ててはならない」と言った明確化されたルールはよく理解できますが「今は冗談を言う空気じゃない」や「自分はボウリングに行きたいけどみんながカラオケの空気だから…」と言った抽象的な事象を理解することが極端に苦手です。
昔「KY」という言葉が流行りましたが社会で生きていく上で明確にルール化されていないあいまいなルール、つまりは空気を読むということはとても重要です。これが著しく出来ないため彼らは学校ではよくいじめにあい、社会では敬遠されることが多くあります。
しかし彼らは興味を持ったものや特定の分野に強い関心を示し没頭する特性を持っています。
気に入ったDVDを1日に何十回も繰り返し見たり、鉄道に興味を持つと時刻表を丸暗記したりします。
実際に欧米では彼らのこの特徴を活かそうと積極的にアスペルガー障害の人を採用する企業もあります。完成したプログラムを何時間も眺め続け、健常者には発見できないようなほんの小さなバグを見つけ出したり、保険商品を再検証しより最適な利率を導き出したりします。
上の図は円周率です。しかし間違っている箇所が2か所あります。さぁどこでしょうか。
どうです?何時間で出来そうですか?そもそもやる気が出ますか?
こういった作業を淡々とやり続けることが出来るのです。アスペルガーの凄さ、わかっていただけたでしょうか。
またアスペルガー以外にも知的障害を持つ方は健常者と比べて丁寧に仕事をする傾向があります。言い換えると納期が迫って急いで仕事をしなければならないと言った状況に合わせて仕事することは苦手です。
しかしながらこういった障害者の特性を理解し、何が得意で何が苦手なのかを把握することで適材適所で場合によっては健常者より高いパフォーマンスを発揮することが出来るのです。
そもそも障害とは何か 才能と障害
膨大な数字の羅列から間違いを的確に指摘できる。これは果たして障害でしょうか。誰にも出来ないことが出来るとなればそれは才能になります。
長所と短所は表裏一体です。例えば両腕がない人で時折両足を腕のように器用に扱い、髭を剃ったり、フォークとナイフを使い食事をしたりする人がいます。両腕がないというところにスポットを当てればその人は障害者になりますが両足を腕のように扱えるというところにスポットを当てればそれは才能です。
厳しい言い方をすると障害者の雇用が増えたというのは今まで社会が空気が読めないダメな奴だと蔑んでいた人たちに私たちには到底及ばない能力を持っていたという事実に気付いたというだけの話に過ぎないのです。
”本当”の障害を持つ人々
長所と短所は表裏一体です。今までただの障害だと思われていたものが実はとても役立つ能力だった……彼らは障害を持つにも関わらず社会で活躍しているのではなく障害だと思われていたものが才能だったという話です。
障害とは何ですか?”障る害”と書いて障害です。私は本当の障害者達を知っています。
それは統合失調症や人格障害と言われる病気や障害を持つ人たちです。
統合失調症は有名な精神疾患で耳にしたことがある人も多いと思います。統合失調症は脳の伝達物質のバランスが崩れ、脳が正常に機能しなくなる病気です。多くは幻聴や幻覚などが現れ、自分が誰かに狙われているといった錯覚にとらわれたりします。これらの症状は薬で抑えることが出来ますが一度発症すると完治が難しく症状が残ったり、後遺症が出たりして多くは精神障害の認定を受けることになります。
集中力や思考能力が著しく低下し日常生活に戻ることも困難な場合も多々あります。
また人格障害は病気ではないが人格に問題のある人たちです。よく知られているのはサイコパスや性的倒錯者でしょうか。
長所と短所は表裏一体と述べましたが集中力が持続しないからこそ出来ることってありますか?人を殺すことに性的快感を得るということを社会で活かせるでしょうか?
大昔や著しい発展途上国では統合失調症は病気ではなく神の言葉を聞ける預言者のような存在としてリスペクトされる時代や国もあります。殺人に興奮を覚える人も時代が違えば英雄になり得ました。しかしこと現代社会に限って幻聴が聞こえることで得することはありません。
また、人格障害は病気でもないので「性格が悪い人」で片づけられるケースも多々あり周りからの理解が得られません。理解が得られないということは支援が受けられないということでもあります。
今まで障害でしかないと思われていたものが活用できるということが広がり新たな人材が社会で活躍し始めたことは大変喜ばしいことですが本当の福祉というのはこういった”障る害”でしかない真の障害を持った人たちをどのように支援していくのか。
私たちは考えていかなければなりません。
あとがき
最近私たちは害ではないという理由から”障がい者”や”障碍者”と言った表記をする団体が増えています。
しかし利点がひとつもないならそれは害と呼ばざるを得ないのでないでしょうか。これは差別ではありません。害でないというのであればそれを活かせる場を見つけなければならないのです。
私には統合失調症の叔父がいます。そんな立場上私は統合失調症だからこそ出来ることを探し続けています。言うなれば統合失調症という障害を持った人たちではなく統合失調症という才能を持った人たちにしたいのですが残念ながら未だ見つけられません。
これを見つけられた時、初めて彼らは障害者でなくなるのです。