トルコリラ急落で損失を抱える個人投資家が急増~~下げ続ける通貨を人はなぜ買うのか
トルコリラの下落が続いています。トルコリラは南アフリカランドなどと並んでFXでは人気の通貨ですが、ここ最近(実はずっと)下落が続いており、今年1月と比べると価値は半減しました。
下落の一途を辿る通貨がなぜ人気なのでしょうか。またこれからトルコリラを買おうと思っている方は是非読んでください。
下落の背景
トルコは慢性的な経常赤字国で財務は海外マネーに頼っています。それはつまりトルコリラに通貨としての力の無さを意味し、トルコが海外マネーに頼る姿勢を見せれば見せるほどトルコリラは下落していきました。そこにトルコ当局がアメリカ人牧師を拘束したことによりトルコとアメリカの関係が悪化。
アメリカはトルコに対し経済制裁を発動、トルコもそれに対し対抗処置を取ったことでトルコリラ下落が加速しました。
絶賛下落中!の通貨がなぜ人気?
トルコリラは短期的にも長期的にも下げ続けています。仮に今年の1月に100万円分のトルコリラを買って現在まで持ち続けているとすればその人は50万円の損失を抱えていることになります。
買う人は当然のことながら利益を出そうと思って買うわけです。なのになぜ下げ続ける通貨を買うのでしょうか。
目先の利益に目がくらむ
下落し続ける通貨に手を出す背景のひとつにスワップポイントがあります。
スワップポイントというのは簡単に言うと利息です。
図のように日本の金利はあってないようなものです。円を持っているだけではお金は増えません。しかしオーストラリアは金利が2.5%あるので日本円で豪ドルに変えて持っていると金利差が利息として利益になります。
1トルコリラ16円で考えると1万通貨あたり16万円で購入できます。そしてトルコリラを1年保有すれば17.75%-0.10%が上乗せされ188240円になるわけです。半端ないですね。
安く買いたいという心理
日本社会では物価は非常に安定しているので投資をやらない人にとってはよくわからないかもしれません。しかし難しい話ではないのでちょっと想像してみてください。
あなたは新しい冷蔵庫を買おうと家電量販店にやってきました。冷蔵庫の売り場を見て回っていいなと思った冷蔵庫が7万円だったとします。
他の店も見て回ろうと他の店を見て回りましたが他のお店にはその冷蔵庫は置いていませんでした。翌日またそのお店に行ってみるとその冷蔵庫は6万5000円に値下げされていました。
そしてその次の日は6万円、そのさらに翌日は5万8000円。
どうですか?今日は買わずに明日また来てみようとは思いませんか?
このように人は一番安いところで買いたいと思うものです。安くなればなるほど「これ以上は安くならないだろう、ここが底値だ」と考える人が増え、買う人が増えていくのです。
株式市場でも為替市場でも投資の世界では秒単位で価格が変わります。自分の想定を下回る価格で推移していると割安だ!と判断してしまいますがそれは割安なのではなく、あなたの想像を上回る欠陥品で実は妥当な価格、さらには割高なのかもしれませんよ?
買う場合は見通しを明確に
決してトルコリラを買うやつはバカだと言っているのではありません。下げの最中に買う(逆張り)手法は有名ですし実際にこの手法で利益を上げていらっしゃる方はたくさんいます。
大事なのは買う根拠です。買おうと思っていたあなた。なぜ買おうと思いました?根拠を何個あげられますか?最低でも3つくらいはあげられないと根拠が弱いと言わざるを得ません。
なぜ下がっているのか・どこまで下がるのか
投資の世界では「割安」や「割高」という言葉がよく使われます。割安・割高とはどういうことなのでしょうか。
読んで字がごとく~の割に安いということです。
A社は好決算が続いている割には株価が安値で推移しているとなればその株は割安と判断されます。
しかし5年連続の赤字決算でいつ潰れるかもしれない会社の株が安値で推移するのは割安なのではなく適正価格です。
大切なのは今トルコが置かれている現状と見通しが価格とマッチしているかということを判断できるかということです。
今のトルコの情勢を考えれば1トルコリラ30円の価値があるだろうと思えば現在の1トルコリラ16円というのは非常に割安です。すぐに買いましょう。
しかし今のトルコの財務状況を考える1トルコリラは10円の価値もないのではないかとなれば現在の価格ですら割高ということになります。
実際の展望
トルコは慢性的な赤字国です。黒字転換する見通しもたっていません。そしてアメリカとの対立も牧師拘束問題で一層悪化し経済制裁も段階的に強化される可能性もあります。金融危機と判断されれば頼りの綱である海外マネーも逃げ出し経済破綻の可能性まで出てきます。
つまるところ先行きがまったく見通せません。先行きが見通せないのに買うということは霧で前がまったく見えないのに道路はまっすぐだし歩行者もいないと信じてアクセルを踏むようなものです。
せめて1年後はこうなってそうだという予想がたてられないうちは買わないほうが良いでしょう。
どうしてもという場合は売りでエントリーすることをお勧めします。恐らくまだまだ下がると思います。