経済・お金のあれこれ

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ニューヨークで空き店舗が増加~~空きが増えるのに賃貸料は上昇する不思議

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今ニューヨークでは商店街の空き店舗が増え、問題になっています。

 

背景には商業不動産の賃貸料の高騰があるのですが、賃貸料に限らず価格とは需要と供給によって決まります。

 

必要な人が増えれば価格は上がり、減れば下がる。

 

しかしニューヨークの商店街では賃貸料が上がっているのにも関わらず空き店舗が増えている、空き店舗が増えているのに賃貸料が下がらないという不思議な現象が生じています。今ニューヨークで何が起きているのでしょうか。

 

景気拡大の勝者と敗者

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なぜ賃貸料が高騰しているのか

そもそもなぜニューヨークの賃貸料が高騰しているのか。それはリーマンショック後から続くアメリカの堅調な景気回復です。

 

景気が良くなるとみんなお金をたくさん使うようになります。お金をたくさん使うということはお金の流通量が増えるということです。お金の流通量が増えるとお金の価値が下がり、代わりに物の価値が相対的に上がることになります。

 

つまりは物価が上昇するのです。日銀が物価上昇に拘るのはこういう理由からなんですね。

好景気なのに売り上げは伸びない?

ニューヨークで空き店舗が増えている理由が好景気による賃貸料の高等であることはわかりました。しかしここで一つ疑問が残ります。好景気であるならばお店の売り上げも好調のはずで、上昇した賃貸料も支払えるはずです。なのになぜお店は賃貸料を払えず空き店舗になってしまうのでしょうか。

そこには好景気の中での勝者と敗者が存在しました。

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アメリカ全体では景気は着実に拡大し、お金の流通量は増えていますが、ニューヨークの商店街に店舗を構えるような店舗型の小売業は苦戦を強いられています。

 

その理由がAmazonなどに代表されるネット通販の拡大です。”アマゾン効果”と呼ばれるこの現象で個人商店はもちろんのこと大手にも打撃を与え、店舗数の縮小などが行われています。

 

つまり、景気はいいけどもニューヨーク商店街にお店を出している小売業の方々の景気は総じて悪いということです。しかしアメリカの景気は良いので賃貸料は上がる、でも払えない、空き店舗になる。といった事態になっているのです。

 

空き店舗が増え続けるのに賃貸料が下がらないのはなぜか

物の値段は需要と供給のバランスによって決まります。いくらこの土地は1億の価値があると地主が主張してもだれも1億円を出してくれなければその土地に1億の値はつきません。

 

また、この土地は10万円の価値しかないから10万円で売ろうと思っていても欲しい人が多ければ「私は20万出すから私に売ってくれ!」「いやいや、俺は30万出そう」「私は100万よ!」と価格は上がっていくのです。

 

したがって好景気でその土地を借りたいという人が多ければおのずと賃貸料は上がっていくのですがニューヨークでは空き店舗が増えているのにも関わらず賃貸料が下がりません。これはなぜなのでしょうか。

貸す側と借りる側のギャップ

上で述べたように好景気だからと言ってすべての人が豊かになるわけではありません。今回ではネット通販で成功を収めた企業は大いに儲かっていますが逆を言えば店舗型販売の小売業の人達は顧客を奪われた形になります。

 

したがって土地を借りる店主側は儲かっていないので安く借りたいですが世の中は好景気です。したがって貸す側としては高く貸したいのです。

 

そのため、地主側は資金力のあるブランド店や銀行を誘致しようと考えています。彼らなら現在の相場にあった賃貸料を払ってくれるからです。

 

そうしたことから、地主側は空き店舗になっても優良な借り手を待つ傾向にあり、場所によっては1年以上空き店舗になっているところもあり、マンハッタンの空き店舗の比率は20%と2年前にくらべ3倍に増えてしまいました。

ニューヨーク市も対策

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空き店舗が目立つようになると景観が悪化します。景観が悪化するとその地域一帯の治安が悪くなったり、土地の価値が下がることになるのでニューヨークにとっては何も良いことがありません。

 

そのため、空き店舗を抱える家主には課税をしたり、長年にわたり経営しているお店に対しては減税をしたりする政策を検討中です。

 

まとめ

基本的に市場というものは放置したほうがうまくいくと言われています。それは需要と供給のバランスがあるためでほしい人が多く、供給量が少ないと価格はあがり、反対になれば価格は下がる。常に適正な価格で市場が動くので政府が何もしないほうがかえってうまくいくという理屈です。

 

しかし時にこのような市場の歪みが生じることがあります。この歪みが生じたときに政府がちょっとだけ介入してあげると詰まりが取れたようにスムーズにお金が循環し始めるのです。

 

日本はデフレが深刻化してくるにつれて大型スーパーの圧倒的な物量による安売り戦略で価格競争に対抗できない個人商店が次々と倒産し駅前商店街がシャッター通りになる問題が各地方で起こりました。

 

市場は基本的に放置したほうが良いですが個人商店が次々倒産するということは失業者が増えるということです。これを放置すると結果的に生産性が低下してしまうので、これは市場の歪みです。

 

そこで政府は”大規模小売店舗法”という介入を行いました。この法律によって商店街のある駅前に大型スーパーが出店できなくなりました。

 

すると大型スーパーは郊外に出店するようになり、消費者は車で大型スーパーに買い物に行くようになってしまい、駅前からますます人を遠ざけてしまったのです。

 

商店街を守るために行われた介入でしたが結果としては商店街にとどめを刺す形となってしまいました。日本はこういう介入が海外と比べるとへたっぴですね。


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